3月下旬に注文住宅が完成し、ちょうど1ヶ月後の4月下旬に新居に引っ越したので、住み始めてから半年が経ちました。ここで一度振り返ってみるのも面白いかと思い、書いてみます。
なぜ注文住宅を選んだか
住宅の購入を考え始めたのは、僕とパートナーの両方が周囲の人たちから住宅購入の話を聞いたことがきっかけでした。
住んでいた賃貸に大きな不満はなかったものの、長く住もうとは思えなかったこともあり、住宅購入を検討し始めました。住宅価格が上がっていることも知っていたため、焦りもあったのかもしれません。
最初から注文住宅に決めていたわけではなく、注文住宅・建売・マンション・買わずに賃貸 という選択肢をフラットに見ていこうと思っていました。しかし、実際にはマンション購入には少しネガティブな印象を持っていました。理由の一つは価格の上昇率が高すぎること。購入が投資目的でなければメリットが少ないと感じたからです。また、建物のメンテナンスに関して住人同士で合意を取る必要がある点も難しさを感じました。
まず、あまり深く考えずに注文住宅のモデルハウスを見に行きました。ただ、これは意思決定をする上で良いプロセスではなかったかもしれません。
後から僕は「注文住宅の方がリードタイムが長いので先に見に行った」などと友人に説明しましたが、実際のところ何も考えずに行動していたのです。
注文住宅はあまりにも魅力的で、その魅力を語る営業さんたちのアピールも実に巧みでした。気がつけば「家とは多くのお金をかける価値があるものだ。仕方ないのだ」と思い、注文住宅を買うことが自分たちにとって最適解である理由を探し始めていました。典型的な確証バイアスです。
結局、建売についてはあまりリサーチをしないまま注文住宅で進めることを選びました。現時点では、その決定に後悔はありません。
どのようにハウスメーカーを選んだか
まず、家に求める機能要件と非機能要件の中で重視したいものについて、パートナーと合意を取りました。耐震性や断熱性、デザインなど、どのくらいが望ましいかを決めました。例えば、耐震性に関しては「許容応力度計算による構造計算で耐震等級3を必須とする」といった内容です。
これらの観点やその度合を洗い出すために、インプットが足りないと感じたため、『エコハウス超入門』を読んでハウスメーカー選択の観点に漏れがないようにしました。「どのくらいの断熱性が必要か?」「空調はどうあるべきか?」といった観点で、この本が非常に参考になりました。
その後、各ハウスメーカーの特徴を、営業さんからの説明や比較書籍を参考に整理し、合意した住宅要件に合致するかを確認しました。デザインに関しては判断が難しかったため、なるべく30坪程度のモデルハウスを見に行って確認しました。住宅展示場のモデルハウスは広すぎて参考にならなかったのが正直なところです。
コストも重要な要素の一つです。2社に絞った段階で詳細な見積もりをもらい、精緻なコスト比較を行いました。その際、FPの方にシミュレーションをしていただき、許容可能な額を明確にしました。これがなければ、少しでも安い方に傾いてしまったかもしれません。
ゆっくりとこの作業を進めたかったのですが、割の良い期間限定キャンペーンを目の前にぶら下げられ、想定よりも急いで決める必要がありました。
どのように土地を選んだか
ハウスメーカーの時と同様に、土地を選ぶ際の観点を洗い出し、パートナーと僕それぞれで優先度を付けて合算しました。
FPの方によるシミュレーションと建物のコストが明らかになったことで、土地にかけられる予算が決まりました。その上で「駅からの距離」「2階建てか3階建てか」「理想とする建ぺい率」「実家との距離」「最寄駅からの通勤利便性」などの条件を出すと、おおよその新居の最寄駅の候補が絞られました。
これらの条件を伝え、ハウスメーカーの営業さんに土地を探してもらいました。もちろん、自分でもSuumoで調べたりもしました。
家を建てる際の補助金や子育て支援の手厚さを考えると、23区外であっても東京都に住むメリットは大きいと感じていたため、東京都内という条件も加わっていたかもしれません。
最終的には、営業さんにいくつかの土地を案内していただき、その土地に建てることを仮定したラフな設計図をもらって決めました。
その地域の将来性について緻密にリサーチすべきだったのでしょうが、道路計画を確認する程度にとどまっていました。住んでから、予想外のポジティブな要素が見つかりホッとした記憶があります。
ちなみに、土地売買に関しては『地面師たち』を見た後であれば、もっとエキサイティングに取引に臨めたでしょう。
設計はどのように進んだか
土地の測量が終わった後、設計士さんがアサインされ、1〜2週間に1回のペースで打ち合わせをすることになりました。
所感としては究極のウォーターフォール開発のようで、こちらの要求をいかに整理して早めに伝えるかが鍵でした。各段階の設計を決める前に、その前のフェーズが固まっていないと進められません。例えば家の形が決まらなければ間取りは決められず、間取りが決まらなければ照明も決められないといった具合です。
要件を明確にするため、何らかのフォーマットを用意して書き出せばよかったのですが、当時はそれが頭になく、箇条書きで列挙したmust-haveとnice-to-haveをお渡ししました。今思えば、howではなくwhatとwhyを書き、howは設計士さんに考えてもらうのが良かったかもしれません。
『ぜんぶ絵でわかる1木造住宅』を読んで勉強してみたものの、やはり素人には限界があり、設計段階では設計士さんとのやり取りに苦労しました。しかし、営業さんが非常にバランス感覚に優れていて手厚くサポートしてくれたおかげで、当初より設計が大きく改善されました。運が良かったと思います。
ハウスメーカーを決めてから3〜4ヶ月かけて設計やインテリアの打ち合わせを行い、工期自体はおおよそ5ヶ月ほどかかりました。
設計でこだわったポイント
まずは全館空調です。断熱・気密性能が高ければ、第一種換気の給気を温めたり冷やしたりするだけで十分であると『エコハウス超入門』にも記載があります。ダクトなどの設備が必要なため初期費用がかさみ、天井高にも制限が設けられますが、長期的に見れば全室エアコンよりも安価で快適ではないかと考えました。夏や梅雨の時期に通風に頼るのは気温的に難しく、カビやダニとの共存を避けられません。第一種換気と冷房の連続運転は健康面でもプラスだと考えました。
リモートワークのためのスペースを2つ作ったので、そもそも全室エアコン設置は現実的ではなかったように思います。
次に階段の幅です。以前住んでいた賃貸がメゾネットタイプだったため、冷蔵庫や家具の搬入で苦労しました。建築基準法で手すりの設置が義務付けられているため、搬入可能なサイズは階段の幅よりも狭くなります。「大は小を兼ねる」と勢いで買った4〜5人用の冷蔵庫は、玄関まで来て引き返していったことがありました。この苦い経験から階段幅を広めにし、結果的に開放感もあり業者の方からも運びやすいと言われました。
2階リビングもこだわりポイントです。昼間に人目を気にせずカーテンを開けられ、かなり明るいです。Low-E複層ガラスを利用しているため、昼は太陽光が反射して中が見えづらく、屋根の形に沿った天井を作れたことで空間の広がりも感じられます。
メンテナンス費用の抑制も考慮しました。衣類ガス乾燥機、浴室乾燥機、1階の掃き出し窓近くのスペースを設けて、ベランダを作らないようにしました。万が一衣類ガス乾燥機が動かなくなっても対応できます。ベランダは防水工事や屋根、手すりの修繕でコストがかかるためです。外壁はサイディングではなく、メンテナンス性に優れた吹付けとタイルを採用しました(ここは調査不足だったかもしれません)。
その他にも、採光やキッチン、洗面脱衣周りにこだわりを反映させています。
住み始めて半年経った感想
設計でこだわったポイントについては、ほとんど全てがうまく機能していると感じます。広いキッチンは思いがけず僕の自炊意欲を高めてくれたのは予想外の副産物でした。
土地選びについても、中型分譲地ということもあり、同じように注文住宅を建てた同年代の方々が住み始めていて、近隣トラブルも今のところありません。
一方、設計面で後悔している点もあります。
一つは、洗面所にドアをつけなかったことです。脱衣所と洗面所が分かれているため、脱衣所にだけドアをつけましたが、朝の支度をする時間が異なる場合、ドライヤーの音が寝ている人に聞こえてしまいます。ドアをつけない選択にも理由がありましたが、このデメリットは事前に認識すべきでした。
二つ目は、寝室のスペースを狭くしすぎたことです。寝るだけのスペースと割り切って小さくした結果、クローゼットとベッドの距離が近すぎて服を選びにくくなりました。賃貸時代がウォークインクローゼットだったので、ここは痛いデグレードでした。
むすび
様々なトレードオフを迫られるので、実際に使った時間以上にハードだったという感想です。そもそも「住宅購入をする」という選択が今のタイミングで良かったのかも分からず、不安は残っています。
設計段階で強く感じたことがあります。それは「ハウスメーカーでの建築において営業さんがとても重要ではないか」ということです。家を建てている複数の知人の話を聞いても同じことを感じます。人生で何度も家を建てるのは難しく、営業さんの顧客目線でのサポートに頼らざるを得ない場面があると思います。
ちなみに、家を建てる過程で最も驚いたのは地鎮祭です。ほぼ同時期に家を建てた先輩と地鎮祭の写真を見せ合ったときのことです。先輩の家と僕の家はかなり離れているにもかかわらず、同じ神主だったのです。その時は腹を抱えて笑いました。地鎮祭専門の神主がいるのでしょうか。てっきり地元の人が儀式をしているのだと思っていたので、本当に驚いた出来事でした。